せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2022年も適当に生きたい。

作り話未満

やどかり

我々やどかりというのは、たいへん柔らかい腹をしている。だから、常に天敵から隠れてこの急所を守らなくてはならない。だが、ずっとじっとしているだけではもちろんそのうち飢え死にしてしまう。そこで我々は祖先の時代からずっと、貝殻をかぶって出歩いて…

店長「当店のワインでないものをお持ち込みでしょうか」

私「えっ」 店長「当店へのお持ち込みはお断りします」 私「いえちょっとずつ味見なんです」 店長「えっ」 私「えっ」 店長「つまりお持ち込みということでしょうか」 私「えっ」 店長「えっ」 私「大ごとってことですか」 店長「なにがですか」 私「異様な…

刺繍

蜻蛉が一匹、夕焼けの空を軽やかに滑ってゆきました。 まだ若い苗がそよそよと揺れる茜色の田の上を、するすると滑ってゆきました。 腹ぺこの熊が一匹、それを見ていました。 自分もそんなふうにするすると、夕空を駆けてゆけると思い込み 熊は蜻蛉の行方を…

なんか流行ってるテンプレらしいので混ぜる

夫が吉野家という、ファミレスのような食堂のようなものに熱中しています。 牛鮭定食でも食ってなさい、と言われて店内を見たところ、平日・休日関わらず、一日のうちに何度も、大盛りねぎだくギョクが注文されていました。 肉やつゆを増やすのではなく、大…

星の王女さま

彼女の訃報は、僕が突発の仕事で地方を走り回っている間に届いていた。帰宅して一息つき、留守番電話に連絡が入っていることにようやく気づいたときにはもう全てが片付いてしまっていた。 年末に会った時のことを思い出していた。 彼女は昨年、恋人を亡くし…

ヒュートモスの触角

ヒュートモスの愛好者がみな口を揃えて絶賛するのはその触角の美しさである。ヒュートモスを地球の生物にたとえてみるならば、猫か犬あたりが適当だろう。やわらかなからだ、温かな湿ったやや細長い塊の、少し膨らんだてっぺんからは、まるで精緻な金糸の束…

手紙

サンタさんへ きょねんはとても とてもすてきなプレゼントありがと ございました ぼくはあんなにたのしくしごとをしたことが なかったのでサンタさんがぼくをさそってくれたのが とても ありがたく みにしみました ピンチヒッターとして すこしでもおやくに…

マウンテングラニーの予言

中学校の卒業式が終わって数日後、春のうららかな日に生まれて初めて一万円札というものを親から渡され、友人たちとディズニーランドへ行った。彼らと離れ離れになるのはそれは寂しかったが、小さな地方都市の住宅地にある市立中学に通っていた生徒らは皆近…

幼馴染

近所の新築住宅に越してきた家族の一人娘があいつだった。仲良くしてやんなさいよというお袋の言いつけに素直に従い学校からの帰り道を一緒にと誘うと俺はいつも、ランドセルを二人分かついで玄関までついていく羽目になった。俺の黒いランドセル、あいつの…

アリとキリギリス

昔あるところに、一匹のキリギリスがいました。彼の仲間たちはみな遊び好きで、夏の間じゅうずっと歌を歌ってにぎやかに暮らしていましたが、彼は皆を横目で見ながら「これじゃただの怠け者じゃないか、このまま彼らと同じようにしていたらきっと俺までダメ…

風をおそれた男

ある中年の男性が死んだ。 彼は3度結婚し、2度は離婚して、3人目の妻を殺すと自らも命を絶った。遠縁も遠縁の、どこでつながっているのかわからないその家系図の隅にいた私は今までその男性の存在さえ知らず、彼が食い潰したという残りわずかな資産を相続す…

北風と太陽

「今度のゲームはなかなかやりごたえがあるね、北風くん」 「そうだね太陽くん。前のようなシンプルなルールとは違うからね」 「わざわざ取り寄せてみた甲斐があったよ。といってもあまぞんでポチっとしただけだけど」 「それにしてもよくこんなレアなゲーム…

とべとべざっつざくえすちょん

京都の苔。 Mossy mossy comin', your comin' son, yours. See cows reek of rich dead, oh my welfare done. Are you me? No, No lord will mourn for one's nunny, Doe's shit is on your knee, know law is no cure. もいっちょ Archaic two finest hours…

くらんぼう

どっどっど。どっどっど。 暗い夜道を歌いながら近づいてくる気配があったら、あなたは気をつけなくてはいけない。くらんぼうがあなたの後を追いかけているしるしなのだ。 くらんぼう。蔵の坊とか、暗い坊とか、人々はいろんな文字を当ててその正体を見定め…

ボタンと糸

小さいころ、もう覚えていない誰かからおもちゃの作り方をひとつ教わった。 少し大きめのボタンを用意する。穴のうち2箇所に糸を通し、その端と端を結んで輪にする。縦向きになったボタンが真ん中にくるように輪になった糸の両端を持ち、真ん中のボタンの重…

ありがちな二人リターンズ

http://d.hatena.ne.jp/cess/20060621#p3 「メリークリスマース!」 「……またあなたね」 「そうよ!今日は一緒にクリスマスのお祝いをしようと思って!」 「一緒に?」 「だってクリスマスじゃない」 「クリスマスがどうしてお祝いの日なのか、よくわからな…

小賢しいわ

「坊や、最近世界中でバイオ燃料のもとになるトウモロコシなどの栽培が盛んになっているのは知ってるかい」 「うん、パパ!地球温暖化を防ぐために有効なんだよね!」 「そうだ。ただそれに伴って食用作物の作付面積の割合が減るから、世界的に穀物などの価…

やがて空を照らすもの

夏の休暇を利用して、ハルトラにある知人の実家にお邪魔している。このログを見ているみんなはご存知のこととは思うけれども、ハルトラは同じ星系とはいってもセウラからはずいぶんと離れているから、双子月のうちひとつは普段見るのと大きさどころか色も違…

夢の中へ

砂浜を歩いていると、見知らぬ子供がしゃがみこんで目の前の砂を掘っているところに出くわした。 うつむいたまま一生懸命に、掘っても掘っても崩れてなだらかになっていく白い砂を、小さな両手でかきわけかきわけ、そのたびにじっと浅い穴を覗き込み、肩を落…

枯れたラベンダー畑が燃える夢

あー、ラベンダーのお香いいなあ。部屋の中がラベンダーだ ラベンダーといったら渚のバルコニーですよ ラベンダーの ラベンダーという花の名前を知らなかった俺は いわゆるギョーカイ用語でベランダのことだと思っていたので なんでバルコニーの歌なのにベラ…

Vセイヴァーのビクトルエンディング後のエミリーが俺女になるの巻

博士、博士どこ? ビクトルが動かないの 博士どこ? あ、思い出した、博士はもういなくなっちゃったんだった ビクトルを起動するときに 生身の人間だった博士は 感電しちゃったの だから博士はもういないの ときどきビクトルが ダークストーカーと たたかう…

シグナル

我らが予言者ミストルテーアがまた星の悲しい未来を感知したとの知らせを受け、モルトAとモルトB、二人の調査員が急遽宇宙へ旅立った。 「今回のビジョンはこれです」ジャンプ前に連絡係が黒いカードを持ってきた。 この次元のありとあらゆる波動を全身の皮…

続き書くけどシンクロの予感で鬱

そうなるともう絶望という二文字で安直に表される気分に僕は落ち込むのだが、そんなことは世界にとってなんの影響を及ぼすものではなく、雨はやはり降り続けているので僕の歩みはだんだんと遅くなる。 しかたなく僕は遠い日の情景を思い出す。にじんだ夜の風…

溶解

雨が降っている。その中を濡れて歩くと左の袖からどんどん重くなっていく。風がある。 失ったもののことを考えるほど身に余裕はない。ないのだが、考えるほどの未来もあるようには思えない。さらに言うと現在がどうなっているのかについては、ちらと想像する…

車掌編8

「ですから、お客様にはお選びいただけるのです」 「何を」 「これからこの列車を運転するのか、それとも乗客として乗るのか」 「どういうこと」 「あなたはここに来る前、ずいぶんと悩んでおられたようでしたから」 「うーん、何を悩んでいたのかもよく覚え…

車掌編7

「……懐かしい曲が流れてきたので思わず取り乱してしまったが、やってきたのは普通の電車だな」 「そりゃそうですよ。ほら、そこに架線が見えるじゃないですか」 「見えてるけどさ!この線路見ても別にシャトルループの高いとこみたいにせり上がったりしてな…

車掌編7

「俺はきっとおかしな夢を見てるんだろうな」 「えー、そんなことはございません」 「ございます!!駅だというのに列車は来ない、なんちゃって車掌なんてのが居る」 「ええと、お急ぎでしょうか?」 「いや……急ぐも何も、ここに来る前何をしていたか覚えて…

車掌編6

「もしかして……」 「何でしょう」 「もしかして、こういうオチなんじゃないだろうな?」 「どういうオチですか?」 「運転手は君だ!」 「車掌は僕だ!」 「ビンゴかよ!」

車掌編5

「いいよ、ここは駅っつうことで」 「えへへ、そうなんですよ」 「で、車掌ってのは電車に乗ってるもんじゃないのかね」 「……えっ」 「君はどっちかっつうと、車掌じゃなくて駅員なんじゃないのかね」 「……えっ、ええと、あのっ、車掌です」 「根拠は」 「う…

半年空いちゃったけど車掌編4

「ええと、駅舎がないって話でしたよね」 「そうだけど、ここ駅なの?線路はあるけど」 「えーと、あなたが来たので、ここが駅ということにしました」 「は?」 「あなたが来たので、ここが駅なのです」 「満面の笑顔で唐突に訳のわからないことを言われても…