せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

作り話未満

けんのんついでに宿題

太陽系の中心から東に約39.5天文単位離れた村で5日、矮小惑星を丸飲みした大きなニシキヘビが宇宙空間に現れた。 現地紙によると、体長Xメートルのこのヘビは、お腹が膨らみ過ぎて動けなくなっており、消防隊員らによって簡単に捕獲されたという。 Xを求め…

アベコウベ

おかしな風が吹いた夕刻だった。 夏の終わりに時々こういう日がある。ひところに比べずいぶんと暮れるのが早くなったとほの赤い空を眺めながら駅舎を出て小さなロータリーを抜けると、そこはこじんまりとした商店街だ。パン屋の店先のガラスケースには黄色く…

少年とテディベア

まだ言葉もおぼつかない頃から、彼は熊のぬいぐるみが好きだった。 彼の誕生祝いとして贈られた大きな茶色い熊は彼が砂場遊びをするようになった途端にぼろぼろになりついには母親によって捨てられてしまったのだが、彼はそれ以来、何か欲しいものはと尋ねる…

ちがーもん俺貞子じゃないもんうわあああん

日の届かない涸れ井戸の底に立ったままじっと自分の足を見ている。親指の爪が伸びてきた。霜が降りたような淡いつやを気に入っているエナメルの赤も、塗ってから10日を過ぎてもうぼろぼろにはがれ、見ようによってはにじんだ血にも見える。大体この色は好き…

笑われた男

その男は漠然と、自分の周りにある世界が崩れていくのを感じていた。 毎朝出勤前にコーヒーショップに寄り、同じベーグルサンドとホットコーヒーを頼み、いつも同じ窓際の席に座り、ぼんやりと外を眺めながら朝食を摂る。週末を除いては毎日繰り返される変化…

ウチのニャンコちゃんが

餌のついた釣り糸が目の前をプランプランと垂れ下がり、全身を覆う汚れた短かな黒い毛があちこちでヒステリックに逆立った。 食べたい、食べたいのだ。 彼女は腹を空かしていた。釣り糸はスパゲティでできており、先には甘く濃厚な汁を体内にたたえているで…

北風と太陽

昔むかしあるところで、北風と太陽が、眼下を歩く旅人の上着をどちらが脱がせるかという勝負をすることになりました。 北風は、おれの力をもってすれば、そんな小さな布きれなどかんたんに吹きはがせるさと、足早に歩く旅人に向かってびゅうびゅうと吹き付け…

ありがち

「ひとつ聞いてもいい?」 「なに」 「もしかして私にこうやって話しかけられるの迷惑?」 「どうしてそう思うの」 「だってあなたからは何も話さないじゃない、私の話を聞くばかりで」 「聞いてないから大丈夫」 「……」 「……」 「あっ、じゃあ今日は私があ…

車掌編3

「とりあえずあのー、線路はあるんですけど」 「いや、あるんですけど、って私に上目遣いで言われても」 「ホームがないからご乗車になれませんよね」 「いや、だからホームどころか駅でもないですけど、ここ」 「ああ!」ポンッ 「な、なんですか!」 「確…

車掌編第2話

「あ、でも線路はあります、ここに」 「ほんとだ、枕木が並んでる。今まで気づかなかった」 「私はこの路線で車掌をしている者です」 「確かに制服姿」 「あなたはどちらまで行かれるのですか?」 「…?ここ駅なの?ホームはどこ?」 「どこって、あれっ…ち…

絵描く時間がないからとりあえず話だけ進めとくな

もうつかれた。 と布団にもぐりこんでみた。 夢をみた。 「あなただれ?」 「車掌です」 「……電車どこ?」 「……あれ?」 「……」 「あっ……あれ?もう発車し……ちょ……あれえ?どこ?」 「……」 「……」

車掌

ご乗車お疲れ様でした まもなく終点 当列車の終着駅でございます どなたさまも お心残りのないよう ご家族 ご友人 そのほか身の周りの人々のお顔をしっかりと 胸に刻みつけていただくため この列車 徐行運転をいたしております お乗換えのご案内です 転生を…

ワンフレーズで

何かを伝える、その時点で人は無意識のうちに相手を騙している。

Those who race toward death(from DOOM『irregal soul』)というかたぶん途中でオチが読める話

われわれは確実に死に急いでいる。 いったい、どこへ向かっていくのか。 わからないけれど待っているのは確実に、死という現象だ。 どうして皆そんなに急ぐんだ。 待っていたってそりゃ死ぬだろうけど。 皆の流れにさからえずに私も走り出す。皆の進む方角へ…

ほめられているぼくはぼくじゃない

ぼくはいつもとっても良い子にしてたよ。 ともだちとけんかもしない、だってともだちいないから。 けんかしたらママがきっとぼくのこと嫌いになるから、けんかしないようにともだちは作らないことにしたんだ。ともだちがいなくても、ぼくはたのしく一人であ…

節分

豆をぶつけられて追い出されて途方に暮れてる鬼は とりあえず俺んちに来るといいと思うよ 3人くらいなら座れると思う 5人来たらかなり狭いからひとりは座布団ひいて台所 もしくはベランダ行きだ じゃんけんで決める 今ならビールがあるよ 飲め飲め つまみは…

ある電波

うるさい黙れ。お前はどうしていつだってしゃべってばかりいるんだ。なんでもわかりあおうね話をたくさんしようねというやつに限って自分のことしか話題にしないじゃないか。どこへ行ったなにを食べた、こう言ったらこんなこと言われたんだよ、もうやんなっ…

今年のクリスマスは中止になりました

中止にしたいよ。 俺、とある中小サンタ事務所に所属してるんだけどさ。 ほんと、中止にして欲しい。俺ほんともうやだ。 この世界に入ったのは5年前。俺はまだまだ若造だから、白ひげつけて、毎年日本のとある地方都市をまわってるよ。おじいさんしかサンタ…

今年のクリスマスは中止になりました

というキーワードでぐぐってあちこちネットサーフィンしているみんな、おはよう!昼寝から覚めてみたらすがすがしい夕暮れだね!カーテンしまってるから外見えないけど。 友達やお兄ちゃんが、サンタクロースなんていないよ、なんていうじゃない?ううん、い…

超わたくしごと・見守るというのはどういうことなのか

「死ねばいいのに」は終わったらしい。そんなこんなをよく事情もわからないまま見かけたのだが、そのあたりの事情とは全く関係なく、かれこれ数年にわたって何バージョンか存在し続けてきた俺ワールドの片隅のひとつのシーンについてここにメモしておく。 あ…

毒をもって毒を制す

幸せな夢を見た。 はじめは、よく知っている海沿いの町、何人かの仲間とともに電車に揺られている。砂洲を通勤車が通行しているのが見える。潮が満ちてきてもその近道を通る車は絶えず、みな水しぶきを上げ車体をがくがくと上下に揺らしながら市街へ向かって…

妄想を膨らませるっていう言い回しがあるよね 膨らませるといったら風船ですよ 顔を真っ赤にして息を吹き込んでおおきく膨らませるゴム風船ですよ 手を離したらシュルシュルいいながら飛んでしぼんで落ちるんですよ だから妄想バルーンっていうかっこいいタ…

できる自分を夢見るだけで幸せになれたという話

ずっとずっと、幸せだった。 自分には、常に数々の選択肢があった。その中から自分は自分にとってもっともよいものを選んでいくだけでよかった。人生は常に変遷を続けるが、無数の分岐点を自分は何の苦悩もなく乗り越え、ここまでやってきた。いや、悩むこと…

Ver.0.050816

月夜にうかれてあるいていたら また君をみつけたよ やせっぽちのビルの屋上の 柵をのりこえようと 震える10本の指で錆びた手すりをにぎりしめて ふと見上げた空の 月があまりに大きいから 君はびっくりしてそのまま見入っている 何をしようとしているのかも…

浦島太郎はUFOにさらわれた。 UFOはとっても楽しいところに太郎を連れて行ってくれたので太郎はとっても楽しかった。 でもUFOは、情けをかけたつもりなのか、太郎を地球へ再び連れ帰ってきた。 そして、自分たちだけが故郷の星に帰ってしまった。 浦島太郎は…

ミルカの×色の部屋

道徳を重んじるその村には奇妙な風習があった。重罪を犯した者が住んでいた家の扉はすべて表から見てはっきりとわかるように特定の色で塗られる、というものだった。他人の家畜を盗んだ者の家、山に火をつけた者の家、酔った末に喧嘩を始め、刃物を持ち出し…

ヴァニシング

同期たちの中で、女ではあいつが一番仕事ができると思った。目立った活躍をしたり、社長表彰を受けたりしたことはなかったが、会議ではいつもツボを押さえた受け答えをし、用意してくる資料は過不足なくまとめられたもので、彼女とは同じ部署にいて、自然と…

今日、バカを殺しました

ばあちゃんへ。元気ですか。 僕は元気です。でも、もうだめです。でも、元気で生きていくと思います。 なんか変ですか?でも、気にしないでください。 今日はちょっと長い手紙になっちゃうけど、でも読んでください。 小さい頃からからずっと僕の中には、も…

満員電車

To:m_oyama23@***.***.ne.jp From:est-k.user12@***.com Subject:「満員電車」 Date: Mon,18 Aug 2003 06:58:53 +0900 1年ほど前に、フリーのサイトスペースを取って小説のようなものを書き始めた。連作の短編が少しずつ溜まっていき、見に来る人の数はそれ…

瞑る星

その星には、不思議な生命体が存在する。 姿のない・・・というと語弊がある。通常の生物のようなはっきり見える肉体を持たない、と言った方が正しいかもしれない。その生命は蛋白質や水分でできた体の中におさまっているのではない。地表を離れ、はるか上空…