せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

アリとキリギリス

昔あるところに、一匹のキリギリスがいました。彼の仲間たちはみな遊び好きで、夏の間じゅうずっと歌を歌ってにぎやかに暮らしていましたが、彼は皆を横目で見ながら「これじゃただの怠け者じゃないか、このまま彼らと同じようにしていたらきっと俺までダメになる」と焦燥感をつのらせる毎日でした。ある日懸命に働くアリの行列を目にしてから、キリギリスは彼らを見習い、汗水たらして食べ物をせっせと集め、自分の巣に貯めこむようになりました。アリたちが、地上のすべてが死に絶えるという冬に備えて必死に働いているのだと知ったからです。キリギリスは一生懸命、仲間の言うことには耳も傾けずに働き続けました。彼の巣はほどよく干からびたバッタやハコベの葉などでいっぱいになり、万全の備えができたことを彼は喜びました。
そして夏が尽き、秋が深まる頃、キリギリスは寿命を迎えました。彼はなにかをやりとげたという満足感ひとつを胸に抱えて天に召されました。うす緑色の、軽いしかばねでした。