せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

毒をもって毒を制す

幸せな夢を見た。
はじめは、よく知っている海沿いの町、何人かの仲間とともに電車に揺られている。砂洲を通勤車が通行しているのが見える。潮が満ちてきてもその近道を通る車は絶えず、みな水しぶきを上げ車体をがくがくと上下に揺らしながら市街へ向かっていくのだ。
春の白い海岸で、バレーボールの円陣パスをして遊ぶ。途中で本気を出したスポーツ万能の仲間が少し離れたところから、サーブを打った。青い空に、白い腕がまっすぐ上を指した。遊びはそこで終わった。ボールが飛びすぎて海に落ち、波にさらわれてしまったのだ。
その奇妙な旅を終えた自分はやがてその仲間の一人と小さな会社を興してその建物内に住むようになった。その建物には幽霊が出た。出るというよりすぐそばの海の上から、風に吹かれて漂いつくのだ。
ビルと呼ぶにはあまりにもささやかな、壁の薄い建物の2階にあるその居住スペースを夜になるとサッシの窓から覗き込む白い顔がある。窓を開けて招き入れる。彼らは部屋の中を歩き回る。そのことで自分はなにか許された気持ちになって、恨めしげに切なげに自分を見下ろす彼彼女らの目線に刺し貫かれたまま、安心して眠りにつくのだ。
ある夜、部屋に入ってきた男の幽霊は、銀色に光るものを持っていた。緑色や茶色を呈すこともあるこの海でも、鰯や鯵や鯔は獲れる。あれはたぶんまだ若い鰯だ。しかしその銀色が、自覚された夢の中という特殊な状況で、物語っている。自分はその銀色の鰯で刺されて死ぬのだ。
仰向けになったまま、自分の胸あたりの寝巻の布地がどす黒い液体で染まっていくのをちらりと見た。痛みはない。自分はこときれるまで自分を刺した外国人の男の幽霊にいろいろと話しかけた。うれしくてうれしくてしかたがなかったのだ。