せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

晩飯

  • 牛肉と青梗菜とねぎのオイスターソース炒め
  • 蓮根と鶏肉と椎茸の梅酒煮
  • ゆかりごはん
  • 煎茶

かなり以前、知り合いのメタボなおっさんから「XO醤で炒めるとどんなものもむちゃくちゃ旨くなる」と言われたのでその日のうちにスーパーで一瓶買った。高いと思ったが、どんな食材も美味中華になると聞いたらやはり心躍るし、中華調味料のくせにXOなんて西洋の文字を使われると、日本の片隅にひっこもったままでいる俺は「なに?中華なのに英語なの?それって、日本のマンガなのにオバケのQ太郎とかいうのとおんなじかんじ?」と混乱しつつその味を確かめるためにとその瓶を手にとってしまうのだった。
その瓶は冷蔵庫に入ったままで、見ると確かに何かに使った形跡はある。あるのだがその時に何を作って食べたかという記憶がまったくないので、感動的というほどのできばえではなかったのだろう。日記にさえ書いていない。
そのXO醤を今日、青梗菜の炒め物に使った。前回、記憶に残るような味に仕上がらなかったのは、きっと量をケチッたか、そうでなければ料理法で下手をうったからかもしれないと思ったのだ。なんせアジア方面をまたにかけ飛び回り食べまくり遊びまくったあのメタボックリ氏が、しかも焼肉ステーキ大好きでお魚野菜が嫌いなメタボックリ氏が、XO醤で味付けされてさえあれば野菜も魚も超バクバク食えると宣言したくらいだ。俺が買ってくる食材が、20円50円の見切りものばかりだったとしても、XO醤さえあれば、ボックリ氏のようにバクバク食えるはずなのだ。
というわけでいざ炒め物にした。

  1. 牛切り落としに塩、こしょうで下味をつけ、酒をもみこんでから片栗粉をまぶす
  2. フライパンを熱して胡麻油と塩を入れ、適当に刻んだ青梗菜の白い茎を炒める
  3. 牛肉と薄切りの椎茸を投入
  4. 肉の表面の色が大体変わったら青梗菜の青いところを入れて蓋をして蒸し焼き
  5. 水気が出て青い葉がしなっとしたら三温糖、醤油を入れる
  6. 手持ちの中華炒めっぽい調味料を全部入れてかんせーです!!!

しかしノリノリだった俺は、XO醤を入れただけでは飽き足らなかったため、工程6.において「コチュジャン」「オイスターソース」をも入れてしまった。しかもコチュジャンは中華じゃなくて韓国の調味料だ。まあいい。牛肉の下ごしらえに使った片栗粉によって良い具合にとろみもついたし、ピリ辛で奥深い香りのいかにも中華っぽいかんじの味付けができたので、今回、料理自体はとっても成功したと思う。だがこの成功も、おっさんの言うとおりにXO醤を入れたからと断定することはとてもできない。この複雑な味わいはむしろオイスターソースおよび使い切るのにあまりに時間がかかったため微妙に変質していたキッコーマン丸大豆醤油の最後の10ccによるものではないかと俺は疑っている。
特にオイスターソースについてはひとつ書いておきたいことがある。オイスターソースを使ったとき、鍋から立ち上ってくるにおいをかぐと「うっ、これ食べ物じゃないよね?」っていうような思いが喉のあたりから湧き上がってくる。これは俺的にはナンプラのにおいをかいだときとまったく同じなのだ。この「うっ?」っていう違和感が、実際口に入れたときには逆にとんでもない食欲増進剤になってくれる。嗅覚が「うっ?」と不審がっているのに、味覚の反応は「うまー!」なのだ。これは考えるととても不思議なのだが、しかし本当にそうなのだからしかたがない。
そういえば、くさやが好きな人というのは、くさやの味の良さを知っているからこそそのにおいをかいで「あ!くさやのにおい!食べたい!」と思うのではないだろうか。パブロフの犬のように。くさやがもし食べ物ではなく、たとえば練炭のような燃料の一種であったならば、そのにおいを好む人が果たしてどれだけいるだろうか。
話がずれた。XO醤っていうのは合わせ調味料であって、どうやらオイスターソースも材料に含まれているようなのだけど、においをかいだときにはオイスターソースの時のような「うっ?」っていう疑問は起こらなかった。むしろ「あっ懐かしいよ!おかーちゃんのにおいがするよ!おかーちゃーん!」と思った。どうしてなのかはわからない。ただ思い浮かぶのはうちのマイマザーの顔ではなく、誰だか知らないが、台所の窓から差し込む夕日に照らされながら大根を刻んでいるかっぽう着を着た女の人の姿なのである。どうして中華グルメな調味料が昭和のおかーさんの姿を呼び起こすのか、俺の思考回路があまりにもデタラメすぎて、このかんじを人にいくら説明してもきっと分かってはもらえないだろうなあ、とうっすらとした悲しみさえ覚える。
そんなぐあいで、オイスターソースの場合とは逆に、俺はXO醤の匂いはとても好きなのにもかかわらず、その旨さが未だによく分からないでいる。