せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

環境への影響

火葬を環境面から評価する向きもある。土葬は環境汚染のもととして知られているが、わけても棺桶そのものが主な汚染源となっているのである。生前もしくは埋葬前に体内に入っていた放射性物質も問題ではあるが、この点においては火葬がより優れているというわけではないようだ。例えば汚染の原因として放射線療法が考えられるが、高エネルギー光子を必要とするもっとも一般的な放射線療法においても、放射能の蓄積が起こることはない。しかし、火葬は放射性物質を速やかに(大気中への飛散を始めとして)周囲の環境へ放散してしまうのである。放射能汚染に対しては、火葬はまったく歯止めの役目をなさないのである。
種々の環境問題のうちいま一つを挙げる。旧来の土葬には広大な土地が必要となる。遺体は様々な材料からなる棺に納められて埋められる。アメリカでは、埋葬前に棺をコンクリート製の外棺*1や覆いの中に入れることが多い。棺一つ一つはそう場所をとらなくても、こうして土葬が数を重ねるにつれ、徐々に土地の問題が深刻化していくのである。特に日本や欧州の大都市の墓苑では、永代使用のできる区画がなくなりつつあり、また既になくなっているところもある。東京では旧来の埋葬区画は極端に少なく料金も高い。ロンドンでは場所の不足から、ハリエット・ハーマン*2が古い墓所を再び開き「二階建て(“double-decker”)埋葬*3」を行うべきであると提言するほどの事態に陥っている。
しかしながら、火葬が環境に重大な影響を与えていることを示す調査結果も集まりつつある。
火葬場からの主要な排出物は、窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化硫黄、超微粒子、水素、フッ酸*4、塩酸*5、非メタン炭化水素*6、その他重金属類、そして残留性有機汚染物質*7である。残留性有機汚染物質排出目録ガイドブックについての国連環境計画の報告によれば、地球上のダイオキシンおよびフランの総排出量のうち0.2パーセントを、火葬が占めているという。

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*1:原文:“vault” 前に訳したときにもこの造語を当てたけどほんとはなんて呼ぶのがいいんだろ

*2:なんか政治家の人みたい。労働党副党首とか

*3:英国なので二階建てバスにかけてるのかなあ

*4:hydrofluoric acid:フッ化水素

*5:hydrochloric acid

*6:NMVOC:Non-Methane Volatile Organic Compounds

*7:POP:Persistent Organic Pollutants