せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

火葬に関する近年の暗い出来事

第二次世界大戦

大量殺戮という残虐行為に加え、ユダヤ人のなきがらは正統派ユダヤ教の教義に泥を塗るようなやり方で処理された。ユダヤの掟ハラーハーは火葬を禁じており、その上、火葬はその人の魂に苦痛を与えるとしているのである。というのも、落命したばかりの人間の魂は自らの死をあまり自覚しておらず、彼らの肉体が焼かれていくのを目の当たりにすることになるからである(非常時以外の解剖が禁止されているのも部分的にはこれと同じ理由による)。普通の埋葬であれば、体が腐敗していくにつれ、魂も次第に“遠くへ”離れていくのである。この時から、火葬は多くのユダヤ人にとって極めて否定的な意味合いを持つこととなった。

トライステート火葬場事件

最近物議を醸したトライステート火葬場事件は、火葬業務の不履行によるものだった。2002年初頭、アメリカ・ジョージア州のトライステート火葬場で過去数年の間に火葬されたと思われていた334もの遺体が、火葬場の敷地内で傷みの進んだ状態で発見された。火葬場の経営者によってその場所に捨てられていたのだ。遺骸の多くは判別が難しくなっていた。多くの場合“遺灰”として家族に返されていたのは人間の遺骨ではなく、木やコンクリートの粉末から作られたものであった。
レイ・ブラント・マーシュ―遺体発見当時の管理者―は787もの罪状で起訴された。2004年11月19日、マーシュ被告はすべての容疑を認めた。被告はジョージア州テネシー州の両方から懲役12年の判決を2件下され、今も服役中である。その後被告は75年間の保護観察期間に入る予定である。
トライステート火葬場へ遺体を送った葬儀場ならびにマーシュ家に対する民事訴訟も起こされ、これらの裁判も最終的には決着をみている。マーシュ家の資産は売却されたが、総額8000万ドルに上る判決総額の回収はおぼつかない状態だ。家族はトライステート火葬場跡を自然に溢れる、公園のような状態に戻したいと表明している。

インド洋津波

マグニチュード9.0〜9.3が観測されたインド洋大地震は2004年12月26日、猛烈な津波を立て続けに引き起こした。死者はおよそ30万人を数え、有史以来最大の犠牲者を出す津波となった。この津波により、インドネシア、タイ、マレーシア北西沿岸などの震源地近辺から数千キロ離れたバングラデシュ、インド、スリランカモルディヴ、さらにはソマリアケニアタンザニアなど東アフリカ諸国でも犠牲者を出している。
当局による夥しい数の遺体の処理は難航を極め、結果として何千もの遺体が合同で火葬されることになった。地域の当局は、腐敗の進む遺体が病気の媒介になるという誤った認識を持っていた*1。これらの遺体の多くは火葬に先立って身元の確認や親類縁者との対面がなされないままであった。また、西洋人の遺体は、大半が地元民であるアジア系の人々の遺体とは別に安置されていた、という反発の声もある。つまり日本や韓国など他のアジア諸国からの旅行者の遺体は、国に戻って葬式を行うより、現地で荼毘に付されるというケースが多かったのである。

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*1:ここ“citation needed”(要出典)って書いてある。WHOの米州事務局がそういう発言を行っているみたいだ。一応日本の全国紙でもそのように報道された(参考:http://infinite.iza.ne.jp/blog/entry/587049/)みたいだ。ただし遺体から感染する可能性もゼロではないけど遺体以外の要因の方が感染源としてよっぽど怖いんだよ、っていう話であって、当時の政府広報や記事などとあわせて読むと、“believed,incorrectly”とまで言い切ってしまうのはちと不適切のような気がする。