せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

マリーズチョイスインザムーンライト

マイファーザーは森永マリーを常食していた。ストレスから胃腸を患い色々食事制限を受け、出てくる食事にはマイマザーが逆切れするほど細かく文句をつけていたマイファーザーだが、一回の食事にあまりものを食べられなくなって以来、夜中になると空腹に耐え切れずに起き出してコップ一杯の牛乳と森永マリーを数枚口にしていたのだった。
一方俺は森永チョイスが大好きだった。パッケージから出たらあとは胃袋に収まるだけの食べものなのに、なんであんなに凝ったデザインなんだと子供心に思っていた。いや、デザインの妙を不思議に思うのならば、ポポロンだってきのこの山だってかっぱえびせんだってコアラのマーチだって面白すぎじゃないかと今では冷静に振り返れるのだが、チョイスのあのふちの丸っこいぎざぎざはなんだか廃墟となった城から出てきた中世の絵画が入った額縁を見ているようで自分の眼にはなんだか飛びぬけて不思議度が高く映ったのだ。ブルボンのアルフォートを見てもなぜかそんな気分にはならなかった。森永のビスケット御三家*1の中で、俺には一番なじみが薄かったのがムーンライトだった。
深夜にマリーを食べに起き出してくる父親とたまに台所で出くわすことがあった。夜中にごそごそものを食べるファーザーを母親は激しく嫌がった。自分の作ったものにあんだけ文句つけといて夜中にこっそり菓子なんぞを食うわけだから気分悪いだろなそりゃ。なのでファーザーはさすがに後ろめたいのかこっそりと足音忍ばせ出てくるので余計にマザーの怒りを買っていた。いつ喧嘩がはじまるかと子供の俺は気が気じゃない。そこで俺はひらめいた。夜半の空気が張り詰める前に、馬鹿娘であるところの俺が、馬鹿丸出しでチョイスをむさぼり食うのだ。マザーの怒りは俺に向き、ファーザーは安心してマリーをかじれるというわけよ。ザッツ素敵なソリューション!というわけである晩、父親が起きてくる頃を見計らって俺は自分の寝床を抜け出して台所へ行き、マイフェイバリットな森永チョイスを取って来て居間に戻り、テレビを見ている夜更かしマイマザーの横で「うまい!うまい!」を連発しながら食った。ああ、牛乳をとってくるのを忘れた、しかし今ここを離れたら彼女の注意が台所の父親に向いてしまう!うう、牛乳なしでばくばく食べるのは結構つらいよチョイス。
しかし俺の考えは浅はかだった。「こんな夜中におやじが食べるから子供まで真似するじゃないか」と更に母の怒りを増幅させてしまったのであった。
こんな思い出でも今はけっこう懐かしい。そして、この思い出に加わらなかったムーンライトは、実を言うと現在、マイマザーの好物なのであった。
で?というような話なのだが、自分でも何が言いたかったのかよくわからない。別に森永の回し者ではないです。

*1:俺が勝手に決めた。チョコチップもディアーも当時存在を知らんかった。未発売だったのか単に俺が知らなかっただけなのかはわからん