せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

読み終えた

陰謀 大化改新―仕組まれた東アジアの政変

陰謀 大化改新―仕組まれた東アジアの政変

別の著者の「入鹿と鎌足 謎と真説」(asin:4059011983)に述べられていた中臣鎌足の「正体」に「えええーー!」とのけぞった自分だが、今日読んだこの本ではもっともっとものすごく「えええええええええ!!」と大混乱に陥った。日本だけじゃなくて東アジア全体の勢力の変遷や実権を握った主要人物の生きた年代まで頭に入ってないともうわけわかんない。たぶん読んだうちの半分も理解できてないと思う。あと、一般的・教科書的な通説とは大きく隔たりのある著者の説を前提にしてどんどん話が進められていくので、果たしてこのまま自分の頭の中の史実のイメージを全部塗り替えてしまっていいのだろうかとちょっと心配になってきた。いや、全部いちいち鵜呑みにする必要はないんだけどね、いっぺんどぷっとその世界観に浸かってしまわないと俺のアタマではこの情報量をきちんと処理しきれないんだよ。なもので途中からはまたしても割と飛ばし読み。
しかし日本書紀に見られる天変地異や怪異現象の記述についての解釈が興味深かった。讖緯説(しんいせつ)に基づいた読み方、であるらしい。陰陽五行説というのが密接に絡んできて、無学な俺はこれを自分なりの言葉で語る知識を持たないのであるけれども、なんだろうね、きっとたぶん、謎を含んだ無邪気なおとぎ話に残虐な史実が隠されていて、それはそのおとぎ話が生まれた当時、関わりのあった人物がまだ政治の中枢にいるなどして、素のままで語りつぐにはあまりにも危険だったからとか、そういうことと根が同じなのかもしれない。お上相手に直接モノモウスことをせずに雅な調べにととのえて表現した結果、ながく後世に残ることになったたくさんの和歌であるとか、そういう謎含みの美しいつくりものを読むのは個人的に大好きなので、この本で一貫してなされている日本書紀へのアプローチの仕方はとても面白いと思った。でも自力で日本書紀を通読してもたぶんそういう美しい*1隠し事を見つけることは到底かなわないであろう非力な己の悲しさ。とほほ。

*1:この場合の「美しい」というのは、清廉さとか道徳的とかそういう意味ではなく、ただ「上手に隠せているかどうか」というのが基準。完成した落とし穴の出来を愛でるようなものかも