- 作者: 小林惠子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1992/09
- メディア: ハードカバー
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しかし日本書紀に見られる天変地異や怪異現象の記述についての解釈が興味深かった。讖緯説(しんいせつ)に基づいた読み方、であるらしい。陰陽五行説というのが密接に絡んできて、無学な俺はこれを自分なりの言葉で語る知識を持たないのであるけれども、なんだろうね、きっとたぶん、謎を含んだ無邪気なおとぎ話に残虐な史実が隠されていて、それはそのおとぎ話が生まれた当時、関わりのあった人物がまだ政治の中枢にいるなどして、素のままで語りつぐにはあまりにも危険だったからとか、そういうことと根が同じなのかもしれない。お上相手に直接モノモウスことをせずに雅な調べにととのえて表現した結果、ながく後世に残ることになったたくさんの和歌であるとか、そういう謎含みの美しいつくりものを読むのは個人的に大好きなので、この本で一貫してなされている日本書紀へのアプローチの仕方はとても面白いと思った。でも自力で日本書紀を通読してもたぶんそういう美しい*1隠し事を見つけることは到底かなわないであろう非力な己の悲しさ。とほほ。
*1:この場合の「美しい」というのは、清廉さとか道徳的とかそういう意味ではなく、ただ「上手に隠せているかどうか」というのが基準。完成した落とし穴の出来を愛でるようなものかも