せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

ヤマザキ秋のパンまつり

ヤマザキパンのCMを見ていると、ふと、昔よく買い物に行かされていた近所のパン屋を思い出す。幼稚園児の自分は、いつも誇らしげに胸を張り、親から渡された110円を握り締めて店に駆け込む。店のおじさんに向かって「しょくぱんいっきんななまいぎりください」と意味もわからず覚えさせられたフレーズを口にすると、おじさんはいつもにっこり微笑んで、慣れた手つきで傍らの食パンを機械に載せ、スライスしてくれるのだった。
その機械って、目盛かなにかがついていて、枚数をセットするとちゃんとそれに対応した厚みでカッターが動く仕組みになってたんだろうか。鈍い銀色に光る機械の形と静かに回転する刃の映像ははっきりと脳裏に残っているのだが、おじさんがそれをどんな風に操作していたのかがまったく思い出せない。あの機械はおじさんが店をたたんでしまったときに、おじさんと一緒に引退したようだけれど、同じ型の機械はもしかしたら今でも日本のどこかで現役で働いているのだろうか。
そういえばあの店で、一度だけ自分が、大泣きしたことがあった。
運動会か遠足か、何か行事のある日の前日、母親が私に、サンドイッチ用の食パンを買ってくるように言いつけた。暗記していったオーダーは「さんどいっちようのしょくぱんいっきん10まいぎり」だったと思う。
私の注文を聞いたパン屋のおじさんは、私の目をじっと見つめて、何を思ったか、いつもよりもちょっとだけねっとりとした口調でこう言ったのだ。
「そうかそうか、じゃあ、耳を切ってあげるね〜〜〜」
幼稚園児、パン屋で大泣き。
もちろんパン屋のおじさんは、何の他意もなく、サンドイッチ用に食パンの耳を落としてあげよう、と言ったわけなのだった。いや、もしかしたら、馴染みの小さなお客をちょっとからかってみようといういたずら心がはたらいたのかもしれない。それにしても私はおじさんの予想を遥かに上回る勢いでおびえた。おびえた。おびえまくった。だって、わーい明日は楽しいえんそくだ♪またはうんどうかいだ♪なんてルンルンスキップしながらパン屋に行ったら、店のおじさんが正面から私を見つめて「耳を切ってあげるね」ですよ。悪夢ですよ。アイアムノットホウイチ!!!!!!!!!!!!!!
大泣きした後いったいどうやって家に帰り着いたのか、親に話したのか、パン屋のおじさんはどんな反応をしていたのか、などなどその後の記憶がまったくないままに、耳切りパン屋さんのエピソードだけが記憶に残っているのでありました。大人のみなさん、子供をからかうのは結構ですが、むちゃくちゃ怖い目にあわせるとその後いくら謝っても取り繕っても、怖かったという思いしか記憶に残りませんよ!!!後々恨まれないように気をつけましょう。
ちなみにそのパン屋のおじさんはジェンキンス氏に似ていたので、私はジェンキンス氏を見るといつも、ほのかな恐怖を伴う記憶とともに、そのパン屋で買ってきたサンドイッチ用の食パンで作った、ソントンピーナツクリームがたっぷりはさまったサンドイッチの味を思い出します。