- 作者: 篠田節子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/08
- メディア: 文庫
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そこからの物語は、きわめて簡単にしか書かれていない。作中作の「聖域」も、ラストは読者に明かされてはいない。でも、小説の結末がどんなふうかよりも、そこに行き着くまでの捜索劇、遠回りになった謎解き、そして作家と編集者の対峙が面白かった。筆を折り、今は仏おろしをする霊能者としてひっそりと暮らしていた作家が、命を削って実藤に見せたもの、そして実藤がたどり着いた死生観は、頭では「ありがちな話じゃないの」と思ってみたものの、やっぱり深く心に残る。いやーもう「心に残る」だなんてほんとにそれこそありがちな幼稚な感想文しか書けなくてじれったいったらありゃしませんよ。