せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

ビデオを観た

16歳の合衆国 [DVD]

16歳の合衆国 [DVD]

元恋人の弟を突然刺し殺してしまった少年と、彼を取り巻く人々の、どう転んでも悲しい物語。たとえば、少年は決して、人を殺してみたかった、などとうそぶくことのできる幼稚な精神の持ち主じゃなかった。たとえば、彼に近づき、手を差し伸べようとした矯正施設の教師は、決して、愛する者とはどんなに遠く離れても裏切りはしない、などと胸を張って言える強い心の持ち主じゃなかった。たとえば麻薬に溺れた少年の元恋人も、ろくに息子に会おうとしてこなかった少年の父親も、思いやりに満ちた元恋人の家族も……みな弱さ、もろさを抱えて生きている。そして、自分を、自分の周囲の人を、自分の立場を守ろうとするとき、醜いまでにその弱さをさらけ出しながら、牙を剥き、あるいは逃げ、裏切る。
そんな人間の心の弱さが見えてしまうとき、少年は怒りではなく、悲しみを感じる。怒りという感情は相手にぶつけることができるけれども、悲しみは自分の中にしんしんとつもりつづける。知的障害を持ち、周囲と年齢相応のコミュニケーションをとることができない元恋人の弟の姿に、少年は、誰にも感情をぶつけることができない自分の悲しさを重ね合わせてしまったんだろう。