せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

飲みすぎた梅酒のせいで

超へんな夢みた。
突然絶望して、いや日常絶え間なく積もり積もった何かに背中を押されて、とある日曜黙って家を出るとそこには大きな公園があり、鉄道祭りが開催されていた。この世界に鉄道というものができて何百年、空を飛べるようになった人々だがその記念すべき日を忘れないようにと特別なイベントをあちこちで開いて祝うのだが、俺はそんな慶事と生まれつき縁のない側の種族だったのでその祭りの意味がよくわからないまま、枯れた色を一面に見せる晩秋の公園を歩いた。
公園の中には北極があり、そこを走る鉄道車両がまだ石炭を燃やすことで動いていた頃の再現施設がもうけられていた。枕木が凍りつかないように、列車の走っていない間じゅう、何かデッキブラシのような長い柄のついた木の道具を使って、レールを挟んで向かい合った作業員たちが線路をたえまなく前後に動かし続ける。その動きはリズミカルで規則正しく、重いガシャン、ガシャンという音を辺りに響かせた。線路が凍らないように、といってもそうやって前後に突き動かされている枕木は巨大なドライアイスの塊なのだ。
母親から携帯に電話がかかってくる。とても心配そうな声で、警察から連絡が来たのよ、と言う。早く帰ってきなさい。いったいどうしたの。もうこの時点で俺の絶望は消えていた。なぜなら祭りの光景は楽しいし、そこでたくさんの人たちが死ぬから。
「この物語を解説したDVDが発売される予定です」と公園内放送局の玄関口で叫ぶ男の姿があった。何か人気の番組の放映が終わったらしい。そのドラマは半分は犯罪者の足跡を追ったドキュメンタリーなのだが、事件を実際と比べたら番組も解説もとても安っぽく買う価値などどこにもなかった。事件そのものを心にとどめておくだけで十分だ。
ジェットふきふき広い公園をめぐると幅50mくらいある小川に橋が架かっていて、上で若者たちが我が物顔に酒盛りをしていた。大きなアンプからドンガブンガいう音楽を大音量で流していて近所迷惑であったが、上記事件の際彼らは被害者となった。「あーー」と叫びながら、一瞬で。とても滑稽であり、悲しい死に方だ。そして顎の外れた口から直径20cmぐらいの巨大な円形のボール紙をたくさんたくさん、ザラザラザラザラと吐き出してから死ぬのだった。
ザラザラザラザラと音を立てて落下した円形のボール紙は、そのまま地面にトンと弾んで坂道をどこかへ転がりだす。そして誰か他の子供のかかとや背中に当たるとその子供も「あーー」と叫んで、ボール紙をたくさん吐き出して死ぬ。公園は死体で埋め尽くされるが祭りは祭りなので祝うことをやめてはならない。
ただ警察だけが仕事をしており、見ていた俺も話を聞かれはするが、俺が犯人だということは俺もわかっているにせよ俺がやったわけではないのでなんと言って説明すれば逮捕されるのかもわからない状態で途方に暮れる。いや違う。やってはいないから逮捕されないだけで俺が望んだままに物事が運んだのだった。捕まりたくはないので俺はひとりほくそ笑んだのだ。
祭りの会場の片隅では合同卒業式というものも行われており、俺はまだ卒業はしないけれども友達が出席すると聞いたので見に行ってみた。私服の学校で、女の子たちの多くは振袖を着せてもらっていたが、その親たちはイギリスのポンパドール夫人みたいな格好をして卒業生よりも目立っていた。そして俺の友達はなぜか浴衣を着て出席していた。「このハズし具合がわからない人はわからなければいいんだ」と笑っていたが、彼女はこういうところがあるから世間とうまく折り合えないんだな、と思った。
俺はどうやら生き延びたようだ。なぜなら、早く死ねるようにと願ったから。
ちっともめでたくない、と思った時に視界がふっと暗くなった。このフィルムの終わりも近づいてきたのだ。
眼前に白い肉厚の文字が一行浮かんできた。
「夢をかなえた少年」
そこで目が覚めた。