せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

晩飯(追記あり)

  • レタスのかにフレークあんかけ
  • わかめと蒸し鶏の和風サラダ

夜の果てまで」という小説を以前読んで、頭の片隅に残っていた料理があった。家族で営む中華料理店で日夜働く人妻が、不倫の関係となった主人公の大学生のもとを忍んで訪れ、作る料理。その描写が自分の目を強烈にひきつけた。なにこれ。なんだこれ超うまそう。食べ物がとてもおいしそうに描かれている文章は大好きだ。だがその後この逢瀬は夫に察知され、食べるどころの騒ぎではなくなったような気がする。いや、踏み込まれたのは食べ終わった後だったか。そんなのどっちだっていいと思うくらい、食い意地の張った自分はそのひと皿を作るまでの彼女の鮮やかな手さばきに、つまり作家の筆が紡いだそのひと時の時間に魅入られていたのだった。
今日、何気なく隣町の食料品店に行くと、かにフレークが105円で売られていた。
作ってみようか。
しかしながらあんなに心ひかれた一節であったのに、当のレシピがどうだったかという段になると、肝心なところで記憶があやふやである。材料に、かにとレタスと卵白の3つがあったのは思い出せるのだが、人妻が見事な鍋さばきで、どのように材料をあしらっていたのかが、頭の中で再現できない。
確かこうだった、というにもおこがましい脳内レシピをなぞり、自分の環境に合わせてアレンジする。アレンジ、というかバージョンを落とす、というか。
が既に材料がアレだ。まず、105円のかにフレークだ。はっきり言ってしょぼい。開けてみると、ほとんど白に近い薄紅色だ。かにというとまず思い浮かべるあのよだれを湧かせる赤色、あれがない。コントラストがない。華がない。
味付けだってケチってしまった。高級中華スープの素・味覇を切らしていた自分は、味覇の半額以下で売られていた別のメーカーのものを使った。にんにくとしょうがで軽く炒めたかにフレークに水を注し、スープの素を溶いて味を見てみると、どうも中華の味ではなく、中華の味のような味がする。匂いもだ。そして非力な電熱コンロでの調理は、中華と呼ぶには迫力に欠ける。つうか、雰囲気を出そうと鍋をあおるだけで温度が下がって中身が冷めるのが情けない。
しかしもう引き返せない。水溶き片栗粉を加え、煮立ってとろみが十分ついたら卵白を流し入れ、箸でかき混ぜてふわりとさせる。すると貧弱な色合いのかにあんが、純白に引き立ち少しだけうまそうに見えてくる。白身が固まってきたら、ちぎったレタスをたっぷりと載せた皿の上、とろりとろりとまわしがける。
熱々のうちに食べる。レタスしゃきしゃき、あんかけふわとろ。両者の接するあたりでは熱でレタスがしんなりしていて、それもよい。彩りを補強するためにねぎの青いところをざくざく切って加えたのだが、特に必要はなかった。中華の味のような味、ではあるが自分の舌は当然そんなものはものともせず、一気に平らげたのだった。
サラダは超簡単。市販のドレッシングもいらない。わかめにはシンプルに生姜醤油。これ最強。

2006.9.16 追記

本日、この日記へのリンク元を何気なくたどっていてご本人の掲示板から来訪があったことを知る。ああ、こんなオカシな日記を読んで頂けるとは嬉しいやら申し訳ないやら、とびっくりしつつ、改めて作品を読み返したら、自分が脳内に残っていた記憶のかけらを寄せ集めてでっちあげたレシピが根本から間違っていたことが判明した。
カニ缶じゃないじゃん帆立缶じゃん
卵の白身なんか入れてないし!にんにくもしょうがも使ってないし!ましてや中華スープの素とかそんなもん不要じゃないですか!!!
 _| ̄|○
というわけでこんどはもう少し本文に忠実に作ろうと、ねぎと帆立缶を買ってきました……。大変失礼な日記書きで申し訳ありませんでした。
→作った。うまかった。http://d.hatena.ne.jp/cess/20060916#p7