せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

今年読んだ本で記憶に残っているものベスト3

今年は自分にしてはずいぶんたくさん読んだなあ。たぶん近所にブックオフができたからだ。読み終えたものをどんどん気軽に売れるようになったから。そして、たくさん読んだのになぜベスト10とかじゃないのかというと、読んだものをどんどん忘れていってしまうからなのだ。
その1

世になし者たちの祝祭―畠山重忠と曽我兄弟

世になし者たちの祝祭―畠山重忠と曽我兄弟

これはよかった。今も昔も世の動きというものに興味がまったくない俺は、歴史小説を読んでもちっとも日本史を覚えないので本当に困ったもんなのであるが、いやごめんそれは嘘。別に困ってはいない。多分人生の何パーセントかは損してると思う。いや、だからそんな俺がそもそもなぜこの本を読んだのかというと、ちょうどご近所つながりのとある武士の人がこの本に出ているというので、どれどれどんな人だったんだろう、と珍しく興味をそそられたからなのであった。
時は鎌倉時代にさしかかるころ。曾我兄弟の仇討ちといえば、どこかで学んだり聞いたりした記憶のある人が多いだろう。彼らの後見人を引き受けた畠山重忠という武士の眼を通し、幼くして父を殺された兄弟がその敵を討つまでの時の流れを描いた物語。時代小説なのに、出てくる人物が妙にリアルで人間っぽくて面白かった。今まで読んだことのあるものとはひと味違った。重忠が義経に初めて会ったときの第一印象とか。きっと人間ってのは今も昔もちっとも変わらなくて、たとえば「あのおっさんウゼー」とか「あの若造ナマイキだ」とか「あいつほんとに空気読めねえよな」とか、そういう会話は縄文時代からあったに違いないのだ。そういうのが実感できただけでも読んだかいがあったと思った。あと、衣笠城攻略のエピソードとか。小さな行き違いで兵が動いてしまい、起こさなくてもいい戦で、重忠の祖父が落命するわけなのですが、ああいう「あっ…」っていうアクションが歴史的出来事の引き金を引いてしまうというのがドラマティックでよいなあ。そして、その場面の描写もとても迫力があって、よかったです。
その2
ゴサインタン―神の座 (文春文庫)

ゴサインタン―神の座 (文春文庫)

この夏は、篠田節子の本をたくさん読んだ。昔、最初に読んだ彼女の本は確か「アクアリウム」か「愛逢い月」だったと思う。そういえば「女たちのジハード」はまだ読んでいなかったりするんだけども、今まで読んだ中で掛け値なしによかったのは「弥勒」「聖域」そしてこの「ゴサインタン」だった。いちばん重く心に残ったのは「弥勒」。インドと中国あたりに挟まれた架空の王国を舞台とする壮絶なストーリー。「聖域」は東北地方に消えた謎の女性作家を追う編集者の話で、最後に主人公が原稿を受け取るシーンでは体じゅうがガクガク震えるくらい感動した。「ゴサインタン」は、外国人の花嫁を斡旋された大地主の跡取り息子がすべてを失う話で、結婚してからの嫁の神がかり状態がものすごすぎて、もう読んでいるこっちとしては「としこー、としこー」「うわそこまでやるかとしこー」「お前なんか恨みでもあるのかよとしこー」と、戦慄しながらとしこコールを繰り返すばかりでございました。ええ。としこー。
で、この3つの大作の中で、自分としては最初ぶっちぎりで「弥勒」が最高峰にちげえねえ!と思っていた。しかし今になってみると、いや確かに話のスケールでも、万人を考えさせるだろうテーマの重さでも「弥勒」は抜きん出ていて完成度が高いと思うんだけども、でも、でも、俺はたぶん「ゴサインタン」が一番好きなのだ。俺はとしこ神に首ったけなのかもしれない。としこー。としこー。
その3
亡国のイージス 上 (講談社文庫)

亡国のイージス 上 (講談社文庫)

これを読んだのが横須賀まで出かけていって映画を見たりするきっかけになりました。海の上はきもちよくてたのしかったです。しかし小説を読んで、主人公ふたりの姿をむちゃくちゃマンガチックに想像していたので、映画でリアル人間が演じていたのを見てすごい違和感が。