せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

読み終えた

飛鳥―水の王朝 (中公新書)

飛鳥―水の王朝 (中公新書)

ちょっと前に別の飛鳥本を読んでいたので、おさらいしつつも新たな説に触れることができてよかった。石神遺跡から出てきた男女の像を「道祖神」ではなく「石人」と呼んでいるこちらの本のほうが新しいのかな。この本でも須弥山石は須弥山ではなく神仙思想における崑崙山であ〜る説をとっていたが、最後の最後に実はやっぱり須弥山なのではと書かれていてあらら、という感じ。例の遺構が異郷の人をもてなす場として作られたものの一部であり、そこで伎楽が行われていたならば、という但し書きがつくのだが、それならば仏教行事である盂蘭盆会で須弥山像をつくったという日本書紀の記述が無理なく説明できるということらしい。
あと、「女帝斉明」という章が面白かった。この人、寶女王(たからのひめみこ)というんだけど、二回も天皇をやっている。一度目には皇極天皇、二回目には斉明天皇。皇極時代には目の前で息子が大臣暗殺とかやっちゃうし、斉明時代には朝鮮半島に出陣してその途中で68歳で亡くなったというものすごい波乱万丈な人生を送った人なので、俺の中では夫の舒明より存在感がでかい。
この本では、二度目の即位の後で斉明が運河やらの大工事を行い民を苦しめ、果ては無謀にも唐を後ろ盾にした新羅と戦おうとした斉明時代の女王の姿を「自己の肥大」と表現し、後世何度も繰り返される日本の姿に、暗に重ねてみせている。
しかし俺は、60を過ぎても天皇という位を引き受けて、地域の整備をガンガン進めたり面白いものを作らせちゃったり、果ては軍を率いて外国と戦おうとしちゃったり、というこの天皇をただただすげえなあ、と思ってしまった。パワーありすぎ。俺だったら天皇とかやりたくないけどこの人はどうだ、二回もですよ。やっぱり最初のときは蘇我蝦夷さんや入鹿さんがいて自分のやりたいことをやれなくて不満だったのかなあ。いっぺんは弟の軽皇子に後をまかせてみたんだけど、やっぱりもう一度天皇がやれて、嬉しかったのかなあ。