せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

読み終えた

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)

警察官、検事、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官。彼らの目を通して、妻を殺した一人の男性が抱えた秘密が徐々に描き出されていく。いや、徐々に、なんて書くとおかしいな。だって最後の最後にパカッと種明かしをされるような感じなんだもんな。描き出されていくのは、謎の全容ではなく、周りの人間の、その属する組織、あるいは職能を通じた己自身の人生との闘い。で、解けるかと思った謎は警察および検察の組織の保身や取引のために何度も蓋をされてしまうし、そういう隠蔽された動きを暴くのが使命、みたいな新聞記者だって、特ダネ記事にまつわる行き違いで逆に苦い汁を嘗める思いをしてしまっているし、焦り混じりの野心に燃えた弁護士も、真実をあえて追求することをやめてしまう。
と、ドキドキしながら読み進められたのはここまで。どうしてもみんな梶という男の静かな瞳の前に、沈黙してしまうのだな。
「そっとしておいてください―。」俺はそこまでして秘めるようなことではなかったのに、と思ってしまった。たぶんあんまりデリカシーがないんだな。