せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

朝飯

マルシンハンバーグは加熱食肉食品(加工後包装)であるからして、もちろん肉にはすでに火が通っている。だがこれを食べる前にフライパンで焼くことにより、俵型の面に塗られた脂が熱で溶け出し、生肉を焼いたときのような汁感を演出しつつ、表面をカリリと焦がす重要な役割を果たす。
そうしてできたこの焦げこそがマルシンハンバーグの、ハンバーグという肉料理が持つイメージを覆さんばかりの並々ならぬB級的美味しさの真髄であると考える私であるが、しかし今朝はあまりにも空腹であったため、よこしまな考えが脳裏をかすめたのであった。
「フライパンで焼くんじゃなくて、レンジでチンしてもおk?」
ついにこの日がやってきた。前々からふと心に浮かんでは、そのたび必死に打ち消してきた考えだった。上空はどんよりと曇り、ベランダから見下ろせる近所の民家の庭に植えられた枝垂れ桜は満開で、たわわと形容したくなるほどにずっしりと重い薄紅色の花弁の塊を抱いたその古木の枝々はしかしこの曇り空のもと、私の目には幾分悲しそうに映った。きっともうひとりの私が脳裏で私を責めているから、景色がそのように見えるのだ。
自分よ、どうしてそんなことを考えるのか。マルシンのハンバーグは、表面がカリッと黒く焦げているから旨いのだ、だいたい包装に印刷されている調理方法の項には、油をひかず中心まで熱が通る迄中火で焼いてください。表面がカリッとなるとおいしく召し上がれます。とあるではないか。電子レンジではそのような仕上がりは望めまい。ならば、おいしく召し上がれます。という製造者マルシンフーズによる手前味噌一歩前だがまったくの真実であるため万人に全面的に受け入れられているであろう仕上がり状態についての記述は、チンした場合には真となりえないはずなのだ。やめろ。私の中の自分は叫ぶ。やめろ。マルシンハンバーグは表面がカリッとなるまで中火で焼くべきなのだ。やめろ。
でも腹減って死にそうだからチンして食べた。腹減ってたからカリッがなくてもすげえうまかった。