- 作者: 馬場あき子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1988/12/01
- メディア: 文庫
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なんだか読んでいる間じゅうずっと、古典文学超大好きな優等生メガネっ子(当然図書委員)と修学旅行で同じ班になったみたいな、そんな感じだった。旅館の部屋で夜、枕をつきあわせて一晩中しゃべりまくってるメガネっ子。俺はただただ聞き入っている。知識がないので彼女の話す歴史や古典芸能の話が半分もつかめないのだが、ただその勢いと声の美しさに聞きほれている、というイメージ。うむ、せっかく色々勉強になることが書いてあるのに、そっちはちっとも頭に入っていないことがよくわかります。とほ。説話とかもっとちゃんと読んでから再読しよう。
能・謡曲に登場する女、あるいは鬼女、般若の内面を、その筋書きを辿り、あるいは面という様式化の象徴を通じて丹念に見つめ直す終章近くの文章群がいちばん圧巻だと思った。能楽・謡曲への愛も感じるね。愛だよ愛。個人的にはお能なんて観に行く柄じゃねえのですがやっぱり「葵上」とか見てみたいなあと思った。DVDとかあるんだなあ。
般若の面に表されるような、苦悶のすえに人としての己を捨てざるをえなかった女性の成れの果ての姿としての鬼、というくだりには上記のようになみなみならぬ作者の熱さを感じてよかったです。これはきっと作者自身が、自分の内面にその萌芽を、いつ開くともわからない蕾のようなものがあるのを絶えず見つめながら、そしてそのことを時には薄哀しく感じながら、それに耐えつつ生きてきたからなんではないかなと思う。超かっこいい。ハードボイルド。え?