俺が好きな篠田節子という作家の人の作品の中に、500円ぐらいする高級豆腐を買う主婦の姿を見た主人公がブチ切れる話があった。500円の豆腐? そんなもんこの地上に存在するのか!!!と戦慄していたが、俺も見てしまった。そういう豆腐ばっか売ってる店を。といっても小説とは違って、高級スーパーとかじゃなくて、豆腐専門店。ちなみにその店の近くのスーパーでは、木綿豆腐が58円。世の中にはいろんなものがあるんだなあ。
この前の飛び降り騒ぎで厚揚げが食べたくなって、スーパーで普通の、いや2割引シールのついた厚揚げを買ってきて焼いて食べたのよ。だけど俺気がついたんだ、二口目ぐらいで。そもそも厚揚げってそんなに好きじゃないんだなって。頑張ってみたけどやっぱりそんなにおいしいと感じなくて、食べ終わる頃にはちょっと後悔してた。
でも500円の豆腐だったら、おいしくうまうま最後まで食べられるんじゃないかな、という期待が胸の中に湧き起こってきてる。自分の舌が肥えてるっていう意味じゃなくて、そんだけ出したら美味しいはずだという思い込みが味覚を超サポートしてくれるんじゃないかと思ったんだ。そんな今日この頃。この蒸し暑いのに食べものにやたら興味が出てきているのはたぶん目の前に難題が立ちはだかっているからだと思う。せめて、おいしいものを食したく。