そういえばこの前道を歩いていたら消防車とかレスキュー車がどんどん俺を追い抜いていった。なんだろうと思ってたらあっという間に一般車両通行止めになり、とりあえずそのまま封鎖された道を歩いて行くと何人か野次馬の人がいて、その指さす先のマンションの屋上に人影がみえた。その真下あたりの地上には、消防署が用意した巨大マットが二つ敷かれてた。飛び降りようと思ったおじさんが屋上に出てうろうろしているうちに通報されちゃったんだろか。マットはむちゃくちゃ分厚くて、どうやって運んできたんだろう、空気入れてふくらます式なんだろかと俺はぼんやり思った。この上に落ちたら絶対助かるだろな、というものすごい安心感をたたえている。マットかっけえ。
で俺は、その巨大マットを見ていたら、厚揚げに焼き目をつけて刻んだネギと削り節をのせて醤油をジュッとかけたやつが食べたくなったので、豆腐屋に行くことにした。
あのマット超かっけえ。あれがどこにでもあるような普通の街の道路をボーンと占拠してるのってすげえシュール。割と直後にその道をもう一度通ったけど、きれいさっぱり消防や警察の車も何もなくなっていたのでおじさんは地上に再び自分の足で降り立ったんだと思う。厚揚げマットが実際使用されたのかどうかはわからない。