就職活動中なんだけど旅に出る。なんだかとっても珍しい電車に乗れるらしいのだ。くすんだベージュと赤の、昔のローカル線みたいな、角っちょが妙に丸みをおびたかわいい車両が来て、乗ってみると見渡すかぎりどの車両にも誰もいない。
始発駅を出て2、3駅でさすがに何人か地元の人が乗り込んでくる。この電車は一週間かけて日本を周遊するんだそうだ。各種サービスを提供している車両が一箇所あって、ラーメン屋と理髪店が入っている。なにこの組み合わせ。なんで理髪店なの。なんでラーメン店なの。黒い合皮張りのリクライニングチェアで襟足を剃ってもらっている人のすぐ脇には、ボックスシートの窓側に腰掛け背中を丸めて醤油ラーメンをすすっている乗客がいる。
片側の景色が途切れたと思うと視野が開けて北の国の海が見えた。と思った瞬間、列車は急勾配を下り始めた。このまま下っていくと海面よりも低いところを通ることになる。地下トンネルの入り口が見えて、一瞬車内が暗くなって、天井の蛍光灯がパパパパッと灯った。横に二本並んだ蛍光灯が列をなして一定の間隔をおきながらはるか向こうの車両までつながって見えた。綺麗だなと思ったところで目が覚めた。
