せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

思い出したけど勘違いだった

今読んでいる本の著者が述べているように韓国の史書に載っているエピソードで、吉夢を姉妹間で売り買いするという話なのだが、著者が挙げる日本での類似例とは別に、もっと古いものがあったはずなんだよ確か。誰の本で見かけたのだったかどうしても思い出せずジタバタ。

夢売買のエピソード、誰の本で見かけたのだったか思い出したので、発掘した。

大化改新―六四五年六月の宮廷革命 (中公新書)

大化改新―六四五年六月の宮廷革命 (中公新書)

ただし、俺の記憶はかなりいい加減で、そこで取り上げられていた日本のエピソードは曾我物語よりも確かに古いものではあったが、それ自体には夢を売り買いする話はまったく出てこなかった。
俺が文章で説明すると日本語が破滅的になりそうなので、3行にまとめます。

  • 韓国の史書「三国史書」には姉の代わりに妹が偉い人に嫁ぐ話とそれに関わる蹴鞠の話が出てくるよ
  • 日本にも同じ頃、姉の代わりに妹が偉い人に嫁ぐ話とそれに関わる蹴鞠の話が出てくるよ
  • この二つを著者が関連づけていたので、俺の頭の中で二つがごっちゃになったよ
  • なので日本の話にも韓国の場合と同じく夢の売り買いが出てきていたはずだと勘違いしたよ

3行でまとまりませんでした。すいません。
「三国史書」では、吉夢を姉から買い取った妹が、後日起きた蹴鞠をめぐるアクシデントの折に、姉に代わって太宗春秋公に出会い、後に春秋公へ嫁ぎ、次代の王を産むことになる。姉妹の兄である金庾信と春秋公はこのエピソードを通じ主従の絆を深めていった。
同時期の日本で起きたとされる伝説的エピソードには、夢の売買は出てこない。ただし蹴鞠(日本書紀では打毬)の会でいわゆる「沓すっぽ抜け事件」が起きた。それが縁で中大兄皇子と知り合った中臣鎌足は、はじめは皇子に蘇我倉山田石川臣麻呂の娘の長女を嫁がせようと仲立ちをしたのだけど、その長女が親戚の男性にさらわれてしまいその代役を妹が買って出るという筋立て*1。うむ。確かにこうやって並べると似ているっちゃ似ている。忠臣と王、姉妹、身代わり、ボール遊び。

この春秋・庾信主従の物語と我が国の中大兄・鎌足の物語との間には、二点の共通性がみとめられる。第一に、いずれも蹴鞠という球技の場において、競技中に起こったアクシデントが主従の関係を深めるきっかけになっているということ。ただ、中大兄・鎌足の場合は、春秋・庾信の場合と違って、それまで両者は一面識もなかったことになっている。
そして第二に、この主従の関係をさらに深めることになるはずの婚姻がトラブルの発生により頓挫しそうになるが、結局、当初の相手ではなく、その妹が代役に立つことで話がまとまったという筋書きになっていることである。

この著者の記述が印象に残っていたのだけれど、「夢の売買」まで共通項として存在するのだという勘違いが俺の記憶に混ざりこんでしまったのがいけないのだな。
この本では結局両者の話がやたらと類似している理由についてははっきり述べていない。

中大兄と鎌足の出会いの物語と、金春秋と庾信の出会いの物語は、ともに正確な史実を伝えたものというよりは、固いきずなで結ばれることになる主従の出会いを描いた同工異曲の説話と見た方が妥当であろう。二つの所伝は、同様の主題をもった説話として、ほぼ同時期に我が国と新羅の双方で、まったく別個に発生したものと考えられる。

えー。もとより史実じゃないだろうとは思うけど、それならそれでなんでこういう似たような話が同じ頃に生まれたのか知りたいなあ。よくあることなのかなあ。

*1:しかも確か二人の間に生まれたのはのちの持統天皇ですよ