せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2025年もそこそこ適当に生きたい。

山城

せっかくよく切れる刀とそれを操れる腕を持っているのに、そのさむらいは城の中へ入ってしまいました。その刀さばきに美しいなあと見惚れていた百姓は、あーあ、つまらないなあ、とがっかりしました。兵を動かし陣を構える、それはただの偉い人で、敵を自分の腕一本で倒してこそさむらいだ、と百姓はどこか勘違いをしているのです。否、それは百姓の単なる望みであって、実際に国を動かしていく人は兵を率い城を構えるものなのだとわかってはいるのです。でもその城は永久にそのさむらいのものにはならないし、刀の腕だってそのうち鈍ってしまうのがわかっているのです。それだけに、ああ、もったいないなあ、と百姓はため息をつくのですが、自分にできないことを人に望んでもしかたがありません。百姓は今日もせっせと小石混じりの畑を鍬で耕し続けるのでした。