でええええい。ゴリンピックの開会式というのだけは見ておこうと思って帰ってきた。久々にあの梅酒が飲めてうれしかったが正直最後に頼んだ一杯は余計であったわ!やはり何事も適量がよろしいのだ。
しかしテレビの画面がさっきから色彩的にとことん赤っぽい。変な意味じゃなくて。活気があってよろしいがなんだか暑苦しい。そうすると俺はさっき、ちょっとだけふらつきながら登ってきた坂道から振り返って眺めた、残暑の夜空を恋しく思う。今まさにしきりに花火のあがっているテレビの中のあの地ではこれから、世界中から集まってきた猛者たちの熱戦が繰り広げられることだろう。そして俺はといえば、その内容にはまったく興味がない。俺にとんと縁のない事柄なのだ。がしかし、さっきのあの夜空のなんと美しく、なんと親しげな気色であったことか。あれは確かにいわし雲だった。
無料サウナとでも思わなくてはやっていられないこの暑さの隙間から、確かに秋は顔を出そうとしている。それは濃密な夏の空気が少しだけひるむ夜の闇にまぎれいつの間にか空を覆いつくして束の間ほっと息をつき、朝陽に見つからないうちにまたそっと散っていくのだ。