せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

読んでる

万葉の人びと (新潮文庫)

万葉の人びと (新潮文庫)

万葉集に出てくる人たちと歌を、俺みたいな初心者にもわかりやすく解説。おもしろい。とりあえず読んでみようとたまたま手に取ったのだけど、とてもいい本に当たったなあ。NHKの番組を文字に起こしたものだそうで、話しことばが文字になっているのでするする気楽に読める。でもそれだけじゃなくてこの人の操ることばがとても綺麗なのがこの本の魅力にもなっていると思う。著者の名前は、飛鳥へ行ったときに案内所かどこかに置かれていたチラシで何度も見かけた。万葉学の偉い人なんだね。
万葉集はだいたい時代を追って四つの期に分けられるらしい。

この歌集、冒頭に雄略天皇の歌をもってくるってのはなんか天智天皇歌で幕を開ける小倉百人一首を思い出すなあ、なんかかっこいいこと言ってるかなあ、と思って読んでみたけど

籠もよ み籠持ち 掘串もよ み堀串持ち
この丘に 菜摘ます児 家聞かな 名告らさね
そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ
しきなべて われこそ座せ
われこそは 告らめ 家をも名をも

やっぱそうだよな、丘で菜摘みをしているおにゃのこに向かって「いい籠持ってるねー、いいシャベルだねー、君、どこの子?名前なんていうの?」っていわゆるナンパではないかこれは。でも菜摘みってんだからまだうら寒くも感じられる春先の、きっと淡い青空がきーんと澄んで、霞のような薄い雲が頭の上をゆっくりと過ぎていく、風は冷たいけれど日差しはあたたかくて、そんな丘を通りがかって目にした、一所懸命に若菜を摘んでいるおにゃのこにはつい声もかけたくなるってもんだよなー。しかもそこで「大和の国は」とか出てきちゃうのがスケールでかいよなあ。でもしゃがんで地面を掘っていて、声をかけられて振り向いて見上げたおにゃのこの目には、きっと春の空を背負ったこの人の姿が大きくたくましく映っただろうなー。名乗られて二度びっくりしただろうなー。
とかいう俺の妄想より知識に基づいた確かなイマジネーションによって紡がれた面白くためになる解説が読める、そんな本です。後半も面白いのでまた感想を書くかも。