- 作者: 直木孝次郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1990/06/05
- メディア: 文庫
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歴史ってのは単純に出来事の積み重ねなのだ、その中にあるドラマが面白いと思える人には面白いんだな、と考えていたけれど、歴史の記録として伝えられてきたものが実はそうじゃなくて、そのとき権力を握っていた人が自分たちの正当性・正統性を主張するために作り出したものだった、なんて、簡単に一筋縄ではいかないところがいかにも人間のやらかす事っぽくて良いよね。しかもいったん解き明かされてみれば、その「事実と違うことを歴史として作り上げた」という事実すらも「歴史のひとこま」となるんだろうな。固くよりあわされていた組紐がほどかれてたくさんの色の糸の流れと化していくかのようだ。いや、模様編みのセーターをぴぴーっとほどいて、マフラーに編みなおすような試みなのかな。しかし政治というのがその時々の学問を大きく制約する、これはなんともならんもんなのかなあ。それも歴史のひとこま、なんて言いながら悠然と高みの見物を決め込めるのはそれこそ神様だけなんだろね。
神武東征の記述については、実はのちの時代、大海人皇子の壬申の乱の経過を反映しているのである!なんてところがとても面白かった。新しい時代の出来事がいにしえの出来事とシンクロ!ってなんかナウシカの「青き衣をまといて〜」の伝説みたいじゃん、かっこいいじゃんと思うんだがこの場合逆で、実は東征伝説のほうが新しくて、作られる際に、それより少しだけ前に起きた出来事を反映しちゃったってことなのか。
神武天皇非実在説にからんで古墳の話も少し出てきた。あーそういえば見瀬丸山古墳、道がわかんなくて見られなかったんだよなあ。あとで地図をよく見たら入る道を一本間違えてた。手前の広い道を通っていたら行けたのに!うわーん。
そそ、忘れないうちにメモ。文中に森鴎外の「かのやうに」が紹介されてたのでそのうち読もう。と思ったら青空文庫に入ってた。