せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

読んだ

父・こんなこと (新潮文庫)

父・こんなこと (新潮文庫)

ぐいぐい引き込まれて、読み終えたときにはもう日がだいぶ傾いていた。分厚い本ではないし、読みつかえているという感覚はまったくないのに、なぜか時間がかかる。
一番印象的な場面。ちいさな鯛と赤飯の御膳を病床の父親へと持っていくが、父は具合が悪くそれを食べられない。それでもこのわびしい膳の中身をどう思うだろう、と申し訳なさに溢れる筆者の想いをよそに、長いこと膳を見つめていた父はやがて「するすると夏がけの下へ手をひっこめ、しずかに仰向きになると眼を閉じたままにこっと笑った」。筆者は父が、やはり貧しかった幼い頃にその母がこしらえた御膳を思い出しているのだと直感する。