また思い出し話でキョーシュクなのだが、4歳か5歳の頃、とても怖い思いをしたことを覚えている。
何が怖かったのかと言うと、ちょっと恥ずかしいのだが、にわか雨である。家の前でいつものように井戸端会議をするマザー達の周りでちょろちょろ遊んでいた俺は、晴れていた空がちょっとの間にどんどん曇りだし、やがて水滴がぼつぼつ、ざざーーと降り注いできたことに驚いて、情けないことに、パニックを起こして泣き喚いてしまったのだった。周りの人たちが皆笑っている。その笑いのうち数分の一は多分、ほらほらどうして泣くの、怖くなんかないよ、という優しさを含んだものだったのかもしれないが、俺がこんなに恐怖を感じているのに誰もそれを理解せず、俺とまったくちがう反応を示しているということ自体が恐ろしくなり、ますます激しく泣いたのだった。あれが生まれて初めてはっきりと感じた孤独だったのかもしれない。