せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

晩飯

  • スモークサーモンのガレット
  • シードル

古墳を見に行った。場所がとてもわかりやすいので油断してろくろく事前学習もしないで行ってみたら、素人目にはどこが古墳なのかまったくわからない古墳だった。

前方後円墳らしいのだが、俺は仁徳陵みたいに前方と後円のところがわっさわっさ木立になっていて傍目にもわかりやすいのだと思っていたのだ。さっき上記のページをよくよく読んだらやっぱりわかりづらいとか書いてあったよ……。あれは看板がなかったら、いやあってもただの小山にしか見えん。あちこちに銅像みたいのや石碑とかが建ってるし。しかも蚊に刺された!!
東京タワーに登ってこようと思ったのだがなんとなく人がたくさんいそうで疲れるのでやめにして電車に揺られてのろのろ帰ってきた。
ガレットが食べたくなり、ちょっとだけ足を伸ばした。初めてガレットというものを食した店まで行ってみたのだ。夕食時だったので、デザートガレットではなく、サーモンや生野菜ののっかったそれ。だがしかし、どうも最初食べたときの感動がない。どうやら俺はガレット本体ではなく、生まれて初めて食べたガレットに載っていた、バニラアイス塩バターキャラメルソース添えの味に魅入られたのであったらしい。
海沿いを歩いた。たえず吹いてくる風が非常に心地よく、シードルでほろ酔いの俺はぼんやりと歩き続けた。妙な形のビルの3階あたりがガラス張りになっていて、中のレストランの様子が丸見えである。ずいぶん昔にここを訪れたことがある。
その友達の母親はなぜか俺のことをずいぶん気にかけていたようで、なにかというとお誘いを受けたものだった。友達の家庭は貧乏ったらしい俺からみるといわゆるなんだその、ずいぶんとソフィスティケートされた一家だった。山の手さんとでも呼ぶといいかもしれない。
その山の手母さんは、優雅なしぐさでティーカップを手に取り「あなたたちはまだ子供だけれども、こういう場所でのマナーだとか振舞い方を勉強しておくといいのよ、だからこうやって連れてきているの」というようなことを優しく言った。緊張しながら味のしないごちそうをなんとか平らげた俺は、ふむ、そうなのか。ありがたくご馳走になります、と思いながらもあまりいい気持ちはしなかった。自分の子供にそういう教育をするのはいっこうにかまわないが、なぜ俺まで、と不思議だった。あなたは一体何をしたいんだ、と思った。何かその笑顔の裏側に、悪意はないはずの視線に、俺はいたたまれなさと若干の反発を感じていた。というかそういう「教育」も、あれからもう20年が経ち、俺にとっては結局無用の長物だったな。すいませんです。
周りを見るとずいぶんと若いカップルばかりだ。俺一人がこの風景から浮いているような気がしてちょっと心細くなりながらも、あの荒れ果ててただの山になっている古墳のことを思い出していた。ほんの20年ぽっちなんて本当に簡単に経ってしまうんだな。もうちょっと、本当に、ほんのまばたきをするだけのあっという間に俺はしわくちゃになって死ねるんだろうな、そしてしばらくしたら、いや、やっぱりあっという間に誰からも忘れられて、何もなかったことになるんだろうな、ときらめく河口の水面を眺めながら愉快に思った。