いや、じっくり読んでるとほんとは書きたいのだ。興味深い人物や事柄が過去の記録からとりあげられていて読んでいる最中はほんとうに没頭してしまうのだが、なにぶん歴史の流れとか、有名な書物が書かれた時代とか、そういう基本的な知識が欠落しているこちらのアタマがなかなかついていかない。読み終えたときに自分の中になにが残るのか、もしかしたらまたスカッと忘れてしまうんじゃないかとちょっと心配。
- 作者: 小田晋
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/07
- メディア: 文庫
- クリック: 28回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
平賀源内というのは下級武士の出身だったのだが、その彼が江戸ではなく在地讃岐の地で儒学などを学び高い教養を身につけたという事実に筆者は注目している。
(略)しかしそれにしても、当時の身分制社会のなかで、狂名や俳号を名乗りあうことによって、階層的出自の差が一時的に消滅する狂歌や俳諧の世界は、ある意味では、彼のような下積みの才能に対する一定の社会的バイパス装置になっていたことがうかがえる。
しかしその「下積みの才能」が開花したとき、時代が全面的に彼を受け入れたのかといえばそうでもなかった。というのがなんかすごい判るような気がする。
しかし見ようによっては、源内のこういう性格が、日本における最初の近代的自我の萌芽として、その広い知識、豊かな才能とあいまっていかにも爽快な感じを与えるのである。もっとも彼のこの性格、すなわち強気で、やや精神病質で軽躁基調の合金的な循環気質は、彼の当時としてはまれな天下御免の生き方を支えもしたが、また、次に述べるような事情による「固い社会の秩序との間の外的な葛藤」の結果としての妄想反応と、それによる犯罪、獄死という道をたどらせることにもなった。
なんか天才ってたいへんなんだねえ。