せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

もう寝ます

ちょっと前から、剃刀を食べている自分を想像するようになった。
焼きそばをほおばるとそこには剃刀の刃が入っていて、自分の奥歯の間でバリンという音を立てたかと思うと舌の横腹に鋭い痛みが走り、咀嚼中の焼きそばに血の味が混ざっていく。臼歯と臼歯の間になにか薄い破片がぐっと挟まり動かなくなる感触、舌先で触れてみるとそこからも血の味。そして痛みは口の中を満遍なく覆い、今そこに存在する食物と凶器を果たして飲み込んでもいいのだろうか、これは一体何の試練なのか、それとも引導なのかと涙目になりながら思案する自分。
というのは全て脳内で起きている出来事に過ぎず、焼きそばは焼きそばだし、飲み込んでも何の害もない。しかし、何を食べるときにもこの見えない剃刀の刃が私の意識の底から浮かび上がっていつの間にか口腔に入り込んでいる。痛みもまた同じように。
やっかいなのは、剃刀を食べた時の痛みというものが割と簡単に想像できてしまうことだ。昔、生梅飴というキャンディが流行ったのをご存知だろうか。あの、中に梅肉を閉じ込めた透明な飴は、舐め始めるとたちまちのうちに、やたらと鋭い断面を露出させる。梅肉の刺激を求めて飴の表面を這い回っていた舌はその罠にたやすく傷つくのだ。そのときの痛みはたいがいたかがしれているか細い痛みなのではあるが、その痛みを数倍強く、数倍鋭くすればきっと、剃刀を噛みしだいたときのそれに近づくのであろう。バリン、バリンと噛みくだき、口の中は血だらけ傷だらけ。という、妄想。