せすにっき

日記。2019年1月にはてなダイアリーから引っ越しました。2024年もそこそこ適当に生きたい。

晩飯

揚げ物なんてするつもりじゃなかった。揚げ物だけはなあ、油の始末が面倒で、なんて話を職場でしていたのに、それがかえって頭に残り、西友鮮魚売場のパック入り小鯵136円をジュワーと揚げて南蛮だれにジュジュッと漬け込んでガシガシ食べたくなってしまいたまらなくなった。1パックしか残っていなかったソレを買い物カゴに放り込み、ついでに揚げ油と米酢までお買い上げ。
小鯵は数えてみると全部で28尾。そのまんま丸揚げにすればいいものと思い込んでいたけれど、レシピを検索するとどのページでもきちんと鰓および内臓を処理している。しまった、そんな面倒くさい作業が待ち受けているとは考えもしなかった。大きいものでも10cm足らず、小さいものは5cmを超える程度。これら28尾を全部・・・気が遠くなりかける。
包丁でゼイゴとウロコをこそぎ、鰓蓋をこじ開けて赤いものを切り離し、腹に包丁の先を入れてわたをかき出す。だが、やっているうちにだんだん楽しくなってきて、油があたたまる頃には28尾の下処理がすべて終わっていた。小麦粉をまぶし、骨まで食べられるようにじっくり揚げる。
電気コンロの熱量はガスのそれと比べると劣る。いくら揚げてもこんがりと濃いきつね色になってくれない。調節つまみは最大出力を指している。だが焦げない。これは去年、小柴で買ってきた穴子を天婦羅にしたときに経験しているのだが、すっかり忘れていた。ちょっと不満が残る。
小口切りの唐辛子、薄切りの玉葱、昆布、醤油、米酢、砂糖を合わせた南蛮だれに、揚がった小鯵をどぼんと浸す。しかしあの小気味よい「ジュワー」という音は聞こえない。ああああ、これは中華の店でおこげを食べようとあんをかけたのに音が出ない、というくらい悲しい事態ではないのか。南蛮漬けを作るとき、一番ワクワクする瞬間が、油でぷすぷす言っている鯵をたれに漬け込んだあの瞬間の快音を聞くとき、なのではないか。それを楽しむことができなかったのは今日一番の心残りだ。
しかしながら28尾の小鯵はしっかり骨まで揚がっていて、口の中でカシュッと心地よい音を立てて噛み砕かれる。悪くはない。いやむしろ、本当に久々に食べた南蛮漬けのうまさは、想像を遥かに超えるものだった。たれの味付けよりも、頼りない電気コンロでじりじりじっくり揚げられた鯵の食感に思わず目をつぶりニヤニヤと笑いを浮かべる。窓から身を乗り出して鯵うまーーーーーーーーーー!!と叫びたくなる夕餉のひとときであった。