身体を動かしていないから腹が減るはずもなく、それでも冷蔵庫に一番搾りの500ml缶がまだ3つ残っているのを知っているから、飲みたいという欲求だけは頭をもたげてくる。素面で居たくないのだ。
何か食べるものを用意することになった。生キャベツに味噌をつけて食べるのはシンプルで本当においしいと思うけれど、毎晩食べ続けたらそのうち飽きてぱったりキャベツを買わなくなってしまうかもしれない。
冷蔵庫にメークイン2つと半分残った玉葱、そして牛肉の切り落とし200gが入っていたので肉じゃがを作った。メークインは小さめだったので皮をむいて2cm弱の輪切りに。玉葱は一番厚いところが1.5cm程度の櫛形切りに。牛肉は薄くスライスされた切り落としで炒める際に適当に千切れそうだったので包丁で切らずにそのまま使う。
鍋にサラダ油をひいて牛肉を軽く炒め、色が変わったら玉葱を入れ、軽く油がまわるまでさらに炒めた後じゃがいもを投入。水をひたひたに注ぎだしの素と酒、砂糖を加え煮始める。電気コンロの出力は最後まで最大のままだが、ガスコンロなら中火くらいにして煮込むといいと思う。IHヒーターの場合は知らん。
ベッドに寝転がりネットサーフィンをしながら時々思い出しては台所へ行き、表面に浮かんでいるアクをすくう。それを何度か繰り返し、煮汁が少なくなってきたら醤油を加える。適当なところで煮込み終了。コンロをOFFにしてもしばらくは熱いプレートの上、徐々に徐々に冷めていく鍋の中でメークインや玉葱や牛肉はゆっくりと煮汁を吸って風味を増す。明日の朝にはすっかりしみしみの肉じゃがが出来上がっているはずだが、今夜のつまみに小さなどんぶり一杯分を取り分ける。
肉じゃがを作るに当たり、世間一般での肉じゃがのレシピというのはどういうものなのだろう、と思い調べていたら、こんなジョークソフトがあった。
http://www.vector.co.jp/soft/win95/amuse/se311984.html
思わずダウンロードしてしまった。肉じゃがサイコー!と思った。
肉じゃがといえば、いわゆる「おふくろの味」を代表する料理のひとつであり、その材料やレシピは各家庭にてさまざまだと思われる。WEBで見かけたレシピには肉と玉葱とじゃがいものほかに、人参の赤、さやいんげんやグリーンピースの緑も加えられ、三色の彩りを完全装備した、まさに見た目までも完膚なき家庭料理のお手本を示していた。そんでもってところによりしらたきなんかも加わって、素敵ですね(思考停止)。
自分が幼少の時から食べてきたマイマザーの肉じゃがは、変遷の時を経て今のスタイルに落ち着いているが、肉+玉葱+じゃがいも+卵、この基本は変わっていない。卵は出来上がる直前に溶いて鍋に回し入れる。ちょうど、高野豆腐の煮物のように。また、肉は以前は豚肉だった気がするが、10年ほど前からはずっと牛肉を使っているようだ。
マイマザーはおかずをなんでも大量に作りすぎるため、どんなにその出来がよかったとしても必ず食べ残しが出る。たまに実家に帰ると、冷蔵庫の奥には冷たく冷えた肉じゃがが鎮座しているのが常である。その器に入ったじゃがいもは皆に箸でつつかれ、無残にもぼろぼろに崩れており、この粉々のじゃがいもを煮汁とともに白飯にかけて食べるとうまいのだ。マイマザーはなんでも濃く味付けをしてしまう傾向があり、肉じゃがも必要以上に甘辛いのであるが、冷やされたうえ具が砕かれてペーストに近い状態になった肉じゃがを熱い飯にかけて食うとき、その味付けはまさに至福をもたらす。今では、これが自分にとっての「おふくろの味」といえる。