電車の中での迷惑行為に罰金を科すことについて、な話題。化粧とかジベタリアンとか携帯電話とか、きっつい香水とかヘッドホンのシャカシャカ音漏れなんかが例として挙がっていた。これらを罰金つけて取り締まる、というのは実は難しい問題だ、と話が振られる。
とある女子大生は「電車の中で眉毛描いたってファンデ塗ってたって別に周りに迷惑かけてなんかいないじゃん、それよりいまだに携帯で大声で話すオヤジがいるんだよ、あいつら取り締まってよウザいから」と言うかもしれない。
携帯オヤジは「こういうときに緊急の連絡が取れるのが携帯の存在意義じゃないのか、いいじゃないかちょっとくらい。それより座り込んで乗降口をふさいでいる邪魔な学生こそ社会は厳しくしつけるべきじゃないのか」などと言うだろうか。
そこで床に座り込んでいる男子高校生が「なんだよ、こっち側のドアが開けばちゃんとどくからいいだろ。取り締まり?俺らよりも、年寄りを目の前にしながら優先席で寝たふりしているあのリーマンから罰金取れよ」と言ったりしたら、
青黒い目元をしたリーマンは顔を上げ「終電で帰る日が続いて疲れてんだよ、それよりそこのババアが歳も考えずに香水のにおいをふりまきやがって、おかげでこっちは窒息しそうだ。冗談じゃない」と憤り、
そして香水をいささかつけすぎの女性は「いいにおいじゃない!なにがいけないの」と逆切れしてリクルートスーツを着て耳元のヘッドホンからシャカシャカ音を垂れ流す隣の若い男の方を不愉快そうに見やる。若い男は座席で眉を描いている女子大生を、顔をしかめながら眺めている。
という光景が思い浮かんだ。
で、朝礼での話は、結局何が誰に迷惑をかけているのかハッキリできない限りは取り締まり自体が難しいし、少しでも不公平なところが発覚したらその不公平によって不利益を蒙った者が「どうして自分だけが!!」と非難の声をあげるだろう、だから難しい。という流れになっていた。結論なんか別に要らない。朝礼での単なる話題だから。
結局、「誰かに迷惑をかければ回りまわって自分に返ってくる」という法則がわかりやすくあらわれることが世の中なかなかなくて、それが話を難しくしているのだと思った。だからこの場合解決法はその「回りまわって」というまどろっこしい部分をスポンと抜かしてしまう奴が、迷惑だと思う相手に注意するほど紳士的でなく、かつその迷惑をただ大人しく我慢することもできなくなった、ふとしたはずみで頭のネジがはじけとんでしまった奴が、「シャカシャカ音に耐え切れなかったから」「香水が臭かったから」「混んでいる車内で空間を占領していて腹が立ったから」などという理由で彼らに危害を加えるようなことがあったら、ああ、迷惑行為というのは自分に不利益をもたらすものなんだな、自分は迷惑をかけていたんだな、と痛みとともに反省する人がもしかしたらいるかもしれない。
だけども、ネジが飛んでしまった人は、化粧などせずに黙って本を読んでいる学生や、バイブ着信に気づきメールを読むためだけに携帯を取り出したオヤジや、たむろってぽそぽそと話をしているだけの高校生や、次の駅で席を譲ろうと考えているリーマンや、ただ派手な格好をしているだけで香水臭くもない女性や、音量を絞って曲を聴いている若者を張り倒すかもしれない。そしてそんな人にもその人なりの理由があってこそ行動に出るのであって、そういう場合には因果応報どころかまごうかたなき悲劇と呼ぶべき状態になってしまい、自分が思うようには世の中はうまいこといかないもんだな、と思った。